ノノノート
異国メルヒェン編
思い出の中でノノはエストニアのターリンという街にいました。
この街の浜辺には、良い匂いのする松の木がちらほら生えていて、ノノはのんびりそこに寝そべって、洋梨あじのサイダーを恋人のララと分け合って飲んでいます。
夕暮れと海と好きな人と美味しいお酒とほどほどのおつまみがあれば、大抵の人は幸せになれます。それだけのものがあって幸せになれないのならば、そういう人は何処かトンチンカンな生き方をしているのに違いありません。
浜辺に流れ込む波音を聴きながら、ララはメントールのタバコを吸いました。ノノはJOHN LENNONがかけているような丸ぶちのサングラスで大空を見上げます。
ゆっくりと時間は流れて行きます。
アルヴォ・ペルトの『鏡の中の鏡』を聴いている時みたいに。
ある日のふたりは、大きな古い岩で出来た廃墟の教会で隠れんぼをして遊びました。近くで修道女たちが午後の祈りを捧げていました。
ある日のふたりは、朝食のパンに乾いたイチジクをちぎり蜂蜜をたっぷり垂らして食べました。それはとても贅沢な朝食になりました。近くの部屋からはバイオリンを練習する音が聴こえて来ました。
ふたりがそうやって一月暮らしたターリンの棲家は、オペラハウスの屋根裏にあるとても小さな部屋です。部屋にはたった一つだけ大きな窓があり、その窓枠に腰掛けて、いつだって広場を見下ろし、道行く人を観察してあれこれ口にしてはゲラゲラと笑い、抱き合い、キスをして、遅くやって来た月を眺めてからふたりは眠るのでした。
この街の浜辺には、良い匂いのする松の木がちらほら生えていて、ノノはのんびりそこに寝そべって、洋梨あじのサイダーを恋人のララと分け合って飲んでいます。
夕暮れと海と好きな人と美味しいお酒とほどほどのおつまみがあれば、大抵の人は幸せになれます。それだけのものがあって幸せになれないのならば、そういう人は何処かトンチンカンな生き方をしているのに違いありません。
浜辺に流れ込む波音を聴きながら、ララはメントールのタバコを吸いました。ノノはJOHN LENNONがかけているような丸ぶちのサングラスで大空を見上げます。
ゆっくりと時間は流れて行きます。
アルヴォ・ペルトの『鏡の中の鏡』を聴いている時みたいに。
ある日のふたりは、大きな古い岩で出来た廃墟の教会で隠れんぼをして遊びました。近くで修道女たちが午後の祈りを捧げていました。
ある日のふたりは、朝食のパンに乾いたイチジクをちぎり蜂蜜をたっぷり垂らして食べました。それはとても贅沢な朝食になりました。近くの部屋からはバイオリンを練習する音が聴こえて来ました。
ふたりがそうやって一月暮らしたターリンの棲家は、オペラハウスの屋根裏にあるとても小さな部屋です。部屋にはたった一つだけ大きな窓があり、その窓枠に腰掛けて、いつだって広場を見下ろし、道行く人を観察してあれこれ口にしてはゲラゲラと笑い、抱き合い、キスをして、遅くやって来た月を眺めてからふたりは眠るのでした。