2016年7月14日
『ブルドックの黒ちゃん事件』
今日、夕刻に街を歩いていると、地下鉄の入り口付近の柵に黒い大きなブルドックが繋がれていた。僕は彼を仮名だが、黒ちゃんと名付けた。黒ちゃんが視界に入った途端、僕の足はカチンと止まった。こんなにも悲しく、生気を失ったブルドックは未だかつて見たことがない。確かにブルドックは、快活なルックスの犬ではないだろう。しかし、良く見ると可愛らしいクリクリとした目を持ち、愛嬌のある犬種であろう。ところが、黒ちゃんの目ときたら、どんよりと重く、曇ってしまっている。そして、からだの動きがカチンと止まってしまっている。これは、いけない。僕は、黒ちゃんの前で、軽く足をぴょんぴょんと弾ませて、ウサギ風のバウンスダンスを披露し、その後、目線を合わせて変顔をいくつか見せてあげた。すると、黒ちゃんの目に少しづつ正気が戻り、なんだよこいつ、と少し頭を動かしたので、僕はほっと肩を撫でおろした。近くの店でトルコ料理を食べた後、雨宿りがてら、本屋に立ち寄った。大きめの本屋を散策し、8時の閉店時刻に外へ出ると、黒ちゃんのすぐ横に、パトカーが止まっていた。ある少女が黒ちゃんを心配して警察を呼んだのだ。黒ちゃんは、午後3時半から4時間半もの間、そこに、置き去りにされていたらしい。黒ちゃんを巡り、通りがかりのおばさんと若い女性警察官が怒鳴り合いの喧嘩をしている。おそらく保健所に連れて行くうんぬんでもめているのだろう。女性ふたりが、ケンケンガクガクやりあっているので、かなり大きな人だかりが出来た。黒ちゃんは、固まってよだれを垂らしている。少女が心配して、黒ちゃんに手を伸ばした。黒ちゃんに触るのは、勇気がいるだろう。その子はナウシカのように優しい。しばらく眺めていると、とうとう飼い主のおっさんが、赤ら顔で帰ってくる。女性警官は、おっさんに向かって、あなた、自分の犬を4時間半もほっぽらかして、いいと思ってるの!!!、おっさんが言い訳を始めたので、再び喧嘩になる。黒ちゃんは、それでも、飼い主のおっさんが帰ってきてホッとしているようだった。頭を撫でられて、うれしそうだった。なんだかその姿を見ていて、とても切ない気持ちになった。人生もいろいろあるが、犬生もいろいろある。黒ちゃん、幸せを祈るよ。
今日、夕刻に街を歩いていると、地下鉄の入り口付近の柵に黒い大きなブルドックが繋がれていた。僕は彼を仮名だが、黒ちゃんと名付けた。黒ちゃんが視界に入った途端、僕の足はカチンと止まった。こんなにも悲しく、生気を失ったブルドックは未だかつて見たことがない。確かにブルドックは、快活なルックスの犬ではないだろう。しかし、良く見ると可愛らしいクリクリとした目を持ち、愛嬌のある犬種であろう。ところが、黒ちゃんの目ときたら、どんよりと重く、曇ってしまっている。そして、からだの動きがカチンと止まってしまっている。これは、いけない。僕は、黒ちゃんの前で、軽く足をぴょんぴょんと弾ませて、ウサギ風のバウンスダンスを披露し、その後、目線を合わせて変顔をいくつか見せてあげた。すると、黒ちゃんの目に少しづつ正気が戻り、なんだよこいつ、と少し頭を動かしたので、僕はほっと肩を撫でおろした。近くの店でトルコ料理を食べた後、雨宿りがてら、本屋に立ち寄った。大きめの本屋を散策し、8時の閉店時刻に外へ出ると、黒ちゃんのすぐ横に、パトカーが止まっていた。ある少女が黒ちゃんを心配して警察を呼んだのだ。黒ちゃんは、午後3時半から4時間半もの間、そこに、置き去りにされていたらしい。黒ちゃんを巡り、通りがかりのおばさんと若い女性警察官が怒鳴り合いの喧嘩をしている。おそらく保健所に連れて行くうんぬんでもめているのだろう。女性ふたりが、ケンケンガクガクやりあっているので、かなり大きな人だかりが出来た。黒ちゃんは、固まってよだれを垂らしている。少女が心配して、黒ちゃんに手を伸ばした。黒ちゃんに触るのは、勇気がいるだろう。その子はナウシカのように優しい。しばらく眺めていると、とうとう飼い主のおっさんが、赤ら顔で帰ってくる。女性警官は、おっさんに向かって、あなた、自分の犬を4時間半もほっぽらかして、いいと思ってるの!!!、おっさんが言い訳を始めたので、再び喧嘩になる。黒ちゃんは、それでも、飼い主のおっさんが帰ってきてホッとしているようだった。頭を撫でられて、うれしそうだった。なんだかその姿を見ていて、とても切ない気持ちになった。人生もいろいろあるが、犬生もいろいろある。黒ちゃん、幸せを祈るよ。